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4月の短歌

五十年ののちに再びあらはれて

   臨終(いまは)の姿なりけり

 

 

 

明けやらぬ夢のあひだに顕(た)ち出でし

   母の姿の告げたきは何

 

 

 

夢に見るかたち未だつかめずゐて

   生きるすべとはいかなるものぞ

 

 

 

我を待つ子犬の瞳光堪えて

   ひと恋しさも親なきゆゑに

 

 

 

ひとを恋ふ性なればなほ懲りもせず

   架け橋を編む糸を吐かむと

 

 

 

命終のいまはの際に顕はれむ

   思ひで作り励むうつしみ

 

 

 

行き行けど行き着く岸辺はなかりせば

   暗き宇宙に漂ふがごと

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