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​5月の短歌

降りしきる雪積むごとく針槐(はりえんじゅ)

      花踏みながら影を見つめて



 

黙しつつ若葉の影の道を行く

      しらじら月の光あびつつ



 

金雀枝(えにしだ)の花穂あまりにも明るくて

      まずしき我にまぶしかりけり


 

ひとすじの果てなき道の見えにけり

      瑠璃色の空星一つ出づ


 

ひそやかに魂降る音のきこゑけり

      その忍び音の洩れ来る時ぞ


 

ひかり充つ湖(うみ)の汀を望みゐて

      けふの彼方に沈みゆく見ゆ


 

ふるさとを持つひとの眼のあたたかく

      我がふるさとのこの世にはなき



 

夢みつつ現(うつつ)を重ね年経れど

      いまだ捨て得ぬ夢のひとひを

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